X68000PROをいじる(電源換装・コンデンサ貼り替え)
ことの起こり
我が家のレトロPCを置いてある一角から何やらパソコンからしてはいけない、磯の香りが漂ってきた。
これはいわゆる電解コンデンサの液漏れというやつではないか…
取りあえず、8bitの2台*1はそのままオークションで放流するとして、X68000PRO、お前はリペアだ。
X68000PROとは
X68000(以下X68k)に全く興味がない人は、そもそもこんな駄文読まないのだが、私の持っているX68kPRO(以下、機種名にX68kを付けない)は、ほかのX68kと違い横置きモデルで、そのため部品の構成も若干違うのだ*2。
現役時代はEXPERTやXVI*3も持っていたのだが、あいつらはあの頃から金になったので、プータローになった時売ってしまった。
そんでPROだけ手元に残ってたというわけ。
実作業にいるもの
岩崎浩文先生著「X68000 PRO / PROII 修理マニュアル」https://hirofumiiwasaki.booth.pm/items/5021792
まず、何はなくとも。実作業はしなくともPRO持ちならこれ買え。BOOTHで販売されている。開腹の方法とコンデンサのリストだけでも500円以上の価値あり。
しかし、ATX電源の交換を「業者や通販で」で済ませないで回路図くらい載せてくれたり、奥付にBOMとチェックリストがあったり、具体的なコネクタの規格を書いていていただけているとより名著になった気もする*4。
初心者なら「レトロマシン修理 はじめの一歩」シリーズも買っておこう、たぶん。
コンデンサ類(主役)
上記修理マニュアルを見ながら自分でBOMを作って秋月ででも買ってくれぃ。通販か八潮店でのんびり探すのがいいんでないかい。関西なら秋月のところを共立とかに読み替えてください。

VHハウジング8ピン、及びコンタクト(脇役)
電源の作成用。千石で買うといい塩梅。必要量だけ買うには実店舗へゴー。

抵抗4.7kΩ、ユニバーサル基盤、CR2032電池ホルダー(チョイ役)
後述の電源信号の反転回路で使うこととなる。常備しておくべき容量。秋月。そういや秋葉原行くなら1本単位から買えるな。
基盤はブレッドボードと同じ結線になってるやつを買うと楽できる気がする。カッターでカットしやすい安物がお薦め。
オリジナルに合わせるならCR2450のホルダーやピン付いたやつを買うべし。
74LS04もしくは2N7000
反転回路の本体になる。
ちなみに千石で売ってる74LS04について、秋月で買える74HC04で代用してみた。使ってない入力はGNDに繋ごう。
ATX電源
どこかでFLEX-ATXを買うと内蔵しやすいとか何とか見た気がする。
昔はACアダプタで動くATX電源がAbeeて会社から出てた気もしたんだけどなあ。
あと、5インチFDDを繋げるから昔ながらのIDE用の電源ケーブルが2本以上取れるものを最初から用意した方がいい。
若しくは5インチFDDは諦め、FDDエミュレータにまかせるのも一手。
お気に入りのPCショップやAliExpress、Amazonで。私見だけど100Wも出りゃ十分でないかな。
ATX電源の延長ケーブル
ケーブルが色分けされていてカラフルなやつを選ぶと良い。お気に入りのPCショップやAliExpress、Amazonで。
部品で買うならMolexの5558(ピン)と5559-24P(ハウジング)、UL1007-AWG18(配線、基盤に配線する箇所はAWG22くらい?)で、よかった、気がする。AliExpressが安いけどもちろん1個単位では買えない。配線はオヤイデだな。

圧着工具、被覆剥き工具
圧着工具がENGINEERのPA-24やVESSELのやつ、被覆剥きがホーザンP-967やフジ矢のやつ。でもこんなに高かったっけ?
以下、工具類はAmazonやホムセンででも。
ニッパ、ラジオペンチ
フジ矢がトップブランド。
半田ごて、コテ置き台、コテ先をカシュカシュする金属のボールみたいなやつ。作業するのに敷くシリコンゴムっぽいあれ。
コテはgoot派か、HAKKO派か。わたしは前者。普通は初心者にはHAKKOの温調付きを薦めるのがイマドキらしい。
自分は30Wくらいならばどれでもいいんじゃないの、とか思ってる。
ハンダ
鉛入り。最近高いねえ。
電動ハンダ吸い取り器 goot TP-100
これがあると全然違うので買うことを前提で話を進める。https://www.goot.jp/products/detail/tp_100。後継機種でもよい。
高いですな。私は今は亡き埼玉パーツセンターの末期にメガネの兄ちゃんが「もう1万2千円でイイから持ってけ」と投げやりに大売り出ししてもらったときに高えなあと思って買ったけど、定価3倍弱じゃん。中華の安物で大丈夫ならそれがいちばん。
あと、ATX電源の加工のためには、TP-100用の大きく口の開いたコテ先が売っているので、ついでにそれも買うと、ATX電源加工時に楽かもしれない。型番はたぶんTP-100N-25。
IPA、綿棒、平筆、ウェス、IPAの取り皿
イソプロピルアルコール。電解液が吹いたりして基盤が煤けたら塗って掃除。
無水エタノールは高いのでいつもこっちを買ってしまう。薬局で。
マイクロドリル
自分は使わなかったのでどれくらいの径がいいのか分からないけど、通らないコンデンサの穴を広げるときに使うのも一手。
基盤は傷つくと思いますが。
電源の換装
なんてったって電源ケーブル⇔メイン基板のケーブルが薄く液で汚れていて、電源コネクタを引っこ抜くとじんわり先走ったと思われる液がベトベトと…
恐らく毛細管現象で電解液が伝ってメイン基板に染み始めていたんだろう。若しくは染み渡っているのか…
まあこいつはリユースしようと思わずにATX電源に交換一択。そう、30年位前のギリギリ現役時代から、ATX電源へ交換する人が結構いたのだ。だからみんなやっているので検索するとやり方がゴロゴロ引っかかる。
PRO側のコネクタはVHです。
PROの電源は、VHR-8N、VHコネクタの8ピンで本体とつながっているので、まずはこいつを買う。ついでに中のピンも。ハウジングは10個単位、ピンは100個単位でないと売ってもらえなかった…以降、こういう「1個しか要らないのに」問題はリペアの随所で出てくる。
ちなみにPRO以外はコネクタの形状が違うので参考にならないよ。
ATX電源の選定
ATX電源側は、家のガラクタ箱からFSPが出していたACアダプタで動くATX電源(ファンレス!)があったのでそれを使う。

この機会に型番を調べたが、FSP085-5DD01というらしい。スペック等はhttps://www.fspgroupusa.com/2013%20Industry%20Catalogue_V1.pdfに載っているが定格85W云々。元のPRO電源は定格35Wの最大65Wとか書いてた気がするし、まあ、これで動作確認位はできるのでは、ということにして話を続ける。
この電源からはSATA用の電源コネクタが2本出ていたのだが、PROの内蔵ドライブはフロッピー、しかも5インチなのでいわゆるIDEの電源コネクタx2にコネクタを置き換える。昔使えなくなったATX電源をばらしたときに引きちぎっておいたコネクタが役に立つ時が来た*5。

反転回路
重要な点として「ATX電源と電源ONの信号の論理が逆(これはX68k共通)」ということがある。
よく分かんないけど対策として、NOTゲートである74LS04をかます方法と、NチャンネルMOSFETである2N7000をかます方法、のどっちかを採る。これはお道具箱に部品がある方で選んで良くて、どっちを選んだからどうかしてしまう、というのはない気がする。
どちらの回路でも必要な4.7kΩの抵抗を切らせていたので、今回は秋葉原に買い物に出るついでに74LS04を買ってくることにする*6。結局さらに安物の74HC04で済ませたのはご愛敬。
実作業
ATX24ピンの延長ケーブルをぶった切って反対側にVHケーブルを圧着していくもよし、24ピンのピンが刺さる方のハウジングとピンを準備して、フルスクラッチで作るもよし。自分はたまたま後者が手元にあった(昔WindowsPCに何かしようとしたときの名残)のでそっちを使ったが、普通は前者では…
外したPROの電源コネクタを見ながらVHのコンタクトを圧着してハウジングへぶち込んでいく。注意するのは、PROのコネクタの橙は+5VSBなのでATX電源の紫、PROのコネクタの茶はPS_ONを反転して入れるから緑、をATX電源側の配線から繋ぐこと*7。
繋いだうえで
・紫(≒橙)の途中から反転回路へ電源をもらってくるのと、
・緑(≒茶)はぶった切って間に反転回路を噛ませるのと、
・反転回路へのGNDは延長ケーブルに黒が余っているのでそこから持ってくるのと。
メイン基盤、サブ基盤、メモリ基盤
X68kはPROであろうと基盤が2枚以上に分かれている。PROはまだ形が四角いんで素直な方ではある。
電源コネクタが付いていてCPUが載っていて、電解コンデンサの少ない方がメイン基盤で、電解コンデンサが結構多くて、電源スイッチとかが付いてる方がサブ基盤と呼ぶんじゃないかな。こいつらの電解コンデンサとメモリー用のCR電池をハンダ外して交換していく。メモリ基盤*8にも100μFのちんまいやつが載っているので交換する。
コンデンサあるある
PROでは何かおまじないみたいについている0.47μFのコンデンサ、微妙に入手性がよくなくて、結局100本入りを買う羽目になった。当然90本くらい余るんだよなこれ。オークションかBOOTHででも売るかいな。

あと、同人誌にも書かれているC44、そんなにΦ10の3300μFのタマが手に入るとは思わない方がよい。ほかの配線とぶつからないので、少し飛び出す形で太いやつをはんだ付けすることにしたよ…
電動半田吸い取り器を持っていても(作業の実手順)
はんだを吸い尽くして穴がスルーホールですよ状態に持っていく*9には微妙にコツがいる。
とくに順番に交換していくとメイン基盤の何でもないC1(0.47μF、一番小さいサイズ)で穴が通らねえ、ってなって心が折れかける。ソースは私。
ちなみになんとなく、サブ基盤よりメイン基盤の方が、元のハンダ付けの仕方のせいか、穴が通りにくい気がした(オカルト)。
まあそういう場合は、追いハンダ(ともハンダ?)して、吸い取り器を充分当ててハンダをあっためてからジュッと吸う。それでだめなら中途半端に空いた穴にハンダをできるだけ流し込んでから、もう一回やっぱり充分当ててジュッと。追っかけコンデンサの頭に左手の人差し指を乗せ吸い取り器を当てながらコリコリ回し、吸い取り器側もグリングリンとローリングさせながら当ててジュジュジュー、である。それくらいでは周りのICは壊れんだろう、たぶん。吸い取り器の温度?MAXに決まってんじゃん*10。
コンデンサ外したら新しいやつをつける前にIPAとかで拭いてからの方が気分的にいいでしょう。
いちおう書いておくと、PROの基盤のパターンには+極側に「+」と明記しているのが分かりにくいのが数点あるが、-極側は白い〇印があるので、極性に迷ったらそういう感じで付けていくといいんでないか。自信はないけど。
CR電池
もとはCR2450という電池らしいが、-極1か所と、+極2か所外した穴のどちらかに、大体のCR2032電池のホルダーが、斜めにつける形になるがシンデレラフィットする。

実作業
今回はメイン基盤の裏、ちょうど3300μFやビデオ回路群のある真裏が特に、派手にヤニのような汚れがついていた。
プラモ用の平筆でIPAバーッて塗って、綿棒で吸い取り、というのを2回くらい繰り返した。
これが磯の薫りの原因だったら…やだなあメイン逝ってるかも、画面表示イカれてるかもじゃん。

結果
電解コンデンサを全貼り替え、ところどころパターンが焦げたところがあるかも?にせよ、何とかやってみた。
自作コネクタで電源ユニットをメイン基板に装着して電源ON、もともと壊れていたわけでなく、メンテナンスだけだったので素直に動きました。
あとは絶縁して電源ユニットを本体のステーに固定したりいろいろ。

*1:X1turboZとPC-8801FA
*2:あと、バス周りが弱いのでハードウェアの互換性が低いとかも言われている、らしい。
*3:いわゆるマンハッタンシェイプといわれる縦置き筐体のかっこいいやつ。
*4:それは修理の範疇ではない、ということなんだろうなあ。
*5:役に立つ日なんて来ると思っていなかっただけにびっくり
*6:だって回路使う方が何やってるかわかりやすいじゃん。
*7:今どきのATX電源の配線は全部黒の気もするが、そこはカラフルな配線の延長ケーブルを選んで買うか、脳内で変換する
*8:PROだから標準1MB、標準的に+1MB増設されて計2MBで他機種といっしょ
*9:「外れれば当然外したところには穴が開いてるんだから新しいやつがそのまんま付くんでしょう」というのは、若干虫が良すぎると心得た方がよい。
*10:岩崎先生の著書ではできるだけ短い時間で350℃とか以上にしないようにとか、きちんと解説があるので本当はそれに従う